中国の動物農場

一昨日、大学院の授業で中国人留学生から聞いた話。

ジョージ・オーウェルの『動物農場』が中国でも翻訳出版されているとのこと。

その留学生は、オーウェルの原書を、英語で読んでいて、これがオーウェルの名高い共産主義社会主義批判の寓意物語かと興味深く読んだらしい。英語で読めるくらいだから、当然、その本の歴史的意味なり思想的位置づけも予備知識として持ったうえでのことである。

ところがある日気づいてみると、オーウェルの『動物農場』が中国語に翻訳されて書店に並んでいた。共産党がまだ実権を握っている国で、共産主義批判の寓意書を出してだいじょうぶなのかと、心配にもなり、また、そもそもなぜと、不思議に思ったらしい。

ただ中国語訳『動物農場』は、子供向けの翻訳だった。子供向けの翻案ともいうべきもので、動物たちが出てきて、人間の醜い権力争いを皮肉った面白おかしい話になっているのだろう。

ここからけっこういろいろなことが言えるし考えられる。

オーウェル共産主義批判の寓意書が、社会主義の国、中国で、児童向けの寓話として翻訳・翻案されて読まれているというのは、オーウェル自身、予想もつかなかったことだろう。動物寓話という絶大な批判力を発揮するはずのジャンルが、動物物語ゆえに子供向けのものとなって無毒化されたのである。

あるいは逆に、子供向けの寓話という口実のもとに、通常のジャンルではなしえない強力な風刺を展開できるともいえる。実際、中国の『動物農場』は、子供向けの動物寓話という隠れ蓑のものとで、通常ではなしえない中国共産党への批判を展開する武器の一部かもしれないのだ。

もちろん、これ以外にも考えられることはたくさんある。